怖い自動車教習所で見たマッドマックスのマックスターン
30年ほど前にバイク(当時の中型自動2輪)の 免許を取得するために教習所に通ったことがあります。
当時まだポン吉は高校生でした。
住んでる家の近くの教習所は高校生だといろいろと手続きが面倒で、予約も数か月先まで一杯だったので、電車で1時間以上かかる他県の教習所に通うことにしました。
教官は怖くて当たり前だった
その教習所は予約もスイスイ取れて、実技も楽勝で通してくれると評判でした。
そこの教官は非常に高圧的で、とくにバイクの教官は自動車の教官に比べると言葉使いも厳しかったです。
もっとも、当時はどこの教習所も同じような感じだったと思います。
ただし、本当に怖かったのは教習所自体ではありませんでした。
その教習所にはポン吉と同じくらいの年齢の人が多く通っていました。
ポン吉は高校の放課後に制服を着たまま電車で教習所へ通っていましたが、多くの若い教習生は違う方法で通っていました。
教習所よりヤバイ人たち
彼らは、爆音とともに数台の車やバイクに乗って教習所にやってきました。
当時、世間では彼らのことを「暴走族」と呼んでいました。
ポン吉は、彼らとかかわりたくないと思ってましたが、
彼らの多くはポン吉と同じバイクの教習生だったので、どうしても授業や実技で一緒になっていました。
教習時間が同じなので、帰る時刻も同じになります。
彼らが仲間と一緒に帰る時、駐車場の中でバイクに乗った一人が凄いことをやっているのを見てポン吉は感動しました。
それは映画「マッドマックス」の中でしか見たことがなかったのですが、
バイクの前輪だけブレーキを効かせて、後輪はフル回転させる芸当です。
バイクは進まずに、後輪がアスファルトの上で空回りしているので、当然あたりはタイヤの焦げたにおいと煙が充満します。
たしか「マックスターン」とか「バーンアウト」とかいう技だったと思います。
バイクは両手両足をそれぞれ別々に動かす必要がある乗り物なので、
そんなことができるテクニックを持った人を凄くカッコイイと感じました。
しかし、あんまりジロジロ見てると絡まれると思ったので、ポン吉はすぐにその場を立ち去ろうとしました。
すると、そのマックスターンの彼がバイクから降りて大きな声で誰かを呼び始めました。
よく聞くと「〇〇さん!」と呼んでいるのです。
それはポン吉の名前でした。
やばい!きっと教習中に名前を覚えられたんだ!
逃げたところで、すぐに捕まると思ったので目を合わせないように下を向いてじっとしていました。
するとマックスターンの彼がポン吉の目の前までやってきました。
彼はポン吉より背が低かったので、下を向いているポン吉を覗き込むようにして、
「〇〇さん」と言うのです。
目を合わせてはいけないと思いながらも、ゆっくりと顔を見ると、彼はニコニコ笑っていました。
予想外の再開
彼に攻撃的な感じはありませんでした。
すると彼が「△△です」と名乗りました。
その瞬間、誰だかわかりました。
彼はポン吉の幼稚園の時からの同級生でした。
彼は幼稚園時代にスモックの中に毛虫を入れられて大泣きしたことがありました。
やったのはポン吉でした。
幼稚園児のちょっとしたイタズラのつもりでした。
しかし、彼はそれ以来ポン吉のことを同級生なのに「〇〇さん」と呼び、敬語で話しかけてくるようになりました。
彼は地元から遠いところにある他県の教習所で偶然、幼馴染のポン吉に出会えたので喜んでいました。
結局
彼はマックスターンができるにもかかわらず、実技の教習課題にある急制動(急ブレーキ)で失敗して教習所のバイクを2台廃車にしていました。
もう一度失敗したら教習所をやめさせられると笑いながら話していました。
ポン吉はその後すぐに、実技試験をパスして教習所を卒業したので彼がどうなったかは知りません。
ただ、彼がやった「マッドマックス」のワンシーンのようなマックスターンは、今でも忘れていません。