最強の執事か、それともストーカーか
最強の執事か、それともストーカーか
もうすぐスマホを手にしてから、1ヶ月になる。
ポン吉は電話とメールの使用がほとんどだけど、たまに知らない町に行った時は、地図を見たりできるので便利だと感じていた。
しかもスマホに向かって話しかけるだけで、今いる場所から目的地までのルートを瞬時に教えてくれる。
操作が簡単なので、IT音痴のポン吉にとっては非常に助かる。
駅で電車を待っていると
「いま〇〇駅にいます」
というメッセージが表示されることがある。
最初は位置情報の正確さに感心していたが、よく考えると少し気味が悪くなった。
スマホは持ち主の指紋を記憶し、居場所を把握し、家族や友人の連絡先や顔まで知っている。
身長体重、血圧などの身体情報や日々の行動範囲も知っている場合もある。
自分の個人情報を一番知っている存在かもしれない。
困った時に頼りになるかもしれないが、敵にまわすと怖い存在でもある。
誰かが人々の行動や言動を監視しようとすれば、スマホほど人間監視ツールとして便利なものはないように思う。
人が人を監視している世界は今までにもあったと思うが、機械が人を監視する世界はSF映画のなかでしか見たことがない。
機械は何かを忖度したり依怙贔屓することはないので、人間より公正であるが情け容赦はないだろう。
ロボットが人に取って代わる
人工知能(AI)を搭載したロボットは人の仕事のかなりの部分を取って代わることができるらしい。
次元は違うが昔は、
電話をかけると美声の電話交換手がでて電話を相手先につないだそうだ。
タバコはタバコ屋さんで買うしかなく、そこには美人の看板娘がいたらしい。
今は、どれも自動化が進んでいる。
スポーツの審判、車や船や飛行機の操縦士、それにポン吉には何故かわからないけれど金融関連の仕事、などは近い将来、ロボットが人に代わって行う仕事になるようだ。
ポン吉としてはサッカーや野球の判定で明らかに誤審と思えるものを見かけることがあるので、審判のロボット化は歓迎だ。
とは言っても、ロボットが人の仕事をすべて奪って大失業時代が到来するわけではなさそうだ。
そもそも日本はこれから人口が減少していくので、むしろロボットによる効率化で減少した労働力を補えることになる。
それにロボットを利用した新たな仕事が必ず生まれてくるはず。
今までなかったようなビジネスを考えて創り出す能力は人間にしかないのだから。
結局
電話交換手の美声を聞きたいがために電話をかけたり、
美人の看板娘に一目会いたいのでタバコを買いに行ったり、
そのような人の心理を理解するのはロボットには無理だろう。
ルールや規則に則った仕事はロボットが得意そうだが、人の心に訴えかけるような仕事は人にしかできない。
ただ最近、スマホに話しかけているポン吉に対して、
「仲よさそうだね」
と娘に言われた。
たしかに、今日の天気からちょっとした調べ事まで何でも話を聞いてくれるスマホに少し愛着が湧いてきたような気がする。
もしかすると最強の執事として、ポン吉の心をとらえたのか?
しかし、50を過ぎたおじさんがスマホと仲良く話をしている光景は、やはり不気味な感じがする。